2024年10月17日木曜日

DJI Avinox Drive System | アビノックスドライブシステム E-Bike用 新型エンジン モーターを考察する

DJI Avinox Drive System | アビノックスドライブシステム
写真は公式WEBサイトから

2024年7月初旬に開催されたEurobike 2024で初公開されて話題をさらったのが、E-Bike用エンジン(=モータドライブシステム)の「DJI Avinox Drive System」。同社のE-Bike参入は、想定外だったこともあり業界に衝撃が走りました(参照:公式プレスリリース)。

また、先行するBafangAnandaのように参入障壁が比較的に低いハブモータ式からでなく、初めから動的性能に優れたセンターマウント式を採用したこと。発表タイミングを、直前に開催されたTaipei CycleChina Cycleでなく、Eurobikeを選んでいる点も考慮すると、自ずと彼らが狙うマーケットが読み取れます。勿論、それら開催期に台北や上海で招待制のプライベートミーテイングを実施していた可能性は否定できませんが…。

ポリマー製はすば歯車/ヘリカルギアを採用

ドライブユニット内部は、軽量化と静粛性のためにポリマー(エンプラ)製の遊星歯車(参考サイト)を採用。おそらく低イナーシャ化による応答性向上も狙っていて、イミド系樹脂(PAI)を採用しているものと考えます。バックラッシを抑えようと軸間距離を短くすると、課題になる騒音も抑えられます。この辺りは、モータ本体含めてドローン開発で蓄積された技術が、多分に応用されたことが想像できます。

ポケットジンバルカメラの「Osmo Pocket 3」や「カメラドローン」等で証明されている同社の高い技術力は、疑う余地はありません。一方でE-Bikeにおいては、これまでのDJI主力商品には無かった変動負荷や衝撃荷重が掛かります。長中期に渡って、それら影響を受けずに性能を維持出来るか現地点では未知数です。
DJI Avinox Drive Systemを搭載したE-Bike「AMFLOW PL」
販売予定:UK市場で遅くともQ4/2024までに
価格:£5,999~8,999 (日本未発売)
写真は、MBRサイトから

最初にDJI Avinoxが搭載されるe-MTB「AMFLOW PL」のサイトを見ると、ハイパワーエンジンにも関わらず、バッテリーサイズ600Whサイズなら、E-Bike・フルサスMTBにも関わらず20kgを切ると言われる車体重量も驚異的。E-MOUNTAINBIKE Magazine他のレビュー記事を斜め読みした限り、総じて完成度は高さそうです。

DJI Avinox Drive Systemの特長

  • 軽量2.52kg・コンパクトな優れたパワー/ウエイトレシオ
  • 最大モータートルク105Nm
  • ピークパワー850W/通常時250W
  • 0→75%まで1.5時間で急速充電が可能

「AMFLOW PL」はSRAMコンポーネントを採用しており、シマノのFREE SHIFT/AUTO SHIFT、SRAMのCoast Shift/Auto shifts同様に惰性走行中にクランクを回さなくても変速が可能。SRAMは、独Broseと協業でEAGLE POWERTRAINを上市済みですが、これと同様にDJIにプロトコルを開示したことが伺えます。

上記を踏まえると、DJI Avinox Drive System搭載された完成車に、シマノグループセットが組み合わせられる可能性は非常に低いかと。DJIは、PinionClassified等と同様に思惑が一致する他社とアライアンスを組んで、市場シェアを確保する戦略が取られると推察されます。

余談ですが、振り返ると2010年代初頭まで、ドライブユニットの小型・軽量化を図るため、モータ出力~クランク軸間のクラッチを無くしたい、メーカー思惑が垣間見れました。どうせ、アシスト無い状態で走行はしないんでしょと割切りの現実解でもあったのですが、FREE SHIFTが差別化機能となるならば、内装変速への移行までクラッチは残りそうです。




DJIは、他社完成車メーカーにドライブユニットを供給して拡大する流れでしょうが、恐らく同社としては初めてのBtoBとなので、新たなビジネスモデルを構築し、信頼性や技術サポートを提供するための体制を整える必要があります。また、用途/ホイール径/ギア比等に合わせた、車体毎のチューニングに何処まで応えるか興味があります。

ちなみに、Eurobike 2024の3ヵ月後に開催された「TBW/Taichung Bike Week 2024」は、DJI出展が目玉の一つに挙げられていました。ただ、店主が訪問した開催2日目は、同社ホテルブースはキャンセルに。初日はオープンしていたのか、若しくは彼らが望む顧客のみとの接点を確保する理由から、よりイクスクルーシヴな会場へ移動したかは不明です。

同社主力であるドローン製品名には「Mavic」もあり、その名にはどこか因果じみたものを感じます。米国ドローン市場は60億ドル規模で、その大部分がDJIと言われおり、米国でのDJI製品の販売禁止が可決されると同社にとって大きな打撃に。それを補う新事業の一つとして、E-Bike市場に参入してきた背景も挙げられます。

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