CARBOTRONICS | Power Frame |
2025年6月下旬、ドイツ・フランクフルトで開催された「EUROBIKE 2025」へ出張してまいりました。「CARBOTRONICS」は、イタリアの「Motor Valley」で誕生したE-MTBブランドで、従来の電動マウンテンバイクとは一線を画す技術と設計思想を持っています。
メカニクスとエレクトロニクスを融合させた、超軽量・高性能なE-MTBをヨーロッパ製で提供することをミッションに掲げる同社ですが、技術的特徴は下記の通りです。
1. Carbon Forging Technology(鍛造カーボン技術)
- 素材:CF-SMC(Carbon Fiber Sheet Molding Compound)
- 製法:短繊維プリプレグを高精度な加熱型で成形
- メリット:
- フレーム製造時間:約20分(従来のラミネート製法より圧倒的に高速)
- 一貫性のある品質と量産性
- CAE解析が可能な等方性素材
2. Zero Drag System
- 時速25km/hを超えるとモーター抵抗が完全に解除
- モーターオフ時でも自然なペダリング感覚
- 騒音レベル:60dB未満
- トルク:最大110Nm
3. Power Frame Technology
- モノコック構造のカーボンフレームにパワーユニットを完全内蔵
- モーターとフレームが一体化し、剛性と軽量性を両立
- 熱対策やレイアウト最適化により、ストレス下でも高性能を維持
4.サプライチェーンと製造
- 製造地:完全ヨーロッパ製
- 生産効率:中国製品と競合可能なコスト構造
- 環境負荷:短いサプライチェーンで輸送・在庫リスクを低減
CARBOTRONICS ブース |
「igus」や「ENGEL」の取り組みを考えると、数年後には、「射出成型」や「CF-SMC」を用いたパーツやフレームが一般化してそうです。これら技術を俯瞰してみると、「CF-SMC+ラミネートの複合構造」が理にかなっているんじゃないか?と浅慮が浮かんだので調べてみると…。
「CF-SMC」と「ラミネート製法」を組み合わせた製造方法は、すでに一部で実用化されている模様。特に自動車業界では、量産性と構造強度の両立を目指して、複数の成形技術をハイブリッド化する動きが進んでいます。
実用化されているハイブリッド成形の例
- CF-SMC(短繊維)によるベース成形に、連続繊維ラミネート(プリプレグ)を局所的に積層
- 目的:強度が必要な部分に連続繊維を配置し、全体はCF-SMCで量産性を確保
- メリット:
- リブやボスなど複雑形状はCF-SMCで対応
- 応力集中部や荷重伝達部はラミネートで補強
- 成形時間の短縮と性能の最適化が可能
自動車部品での採用例
- 三菱ケミカルは、CF-SMCをベースにした部材にラミネート補強を加える構造を提案しており、すでに一部の車種で採用が進んでいます
- 東レも、CF-SMC製のドアインナーパネルにラミネート補強を加える技術を展示しており、量産化に向けた検討が進んでいます
このようなハイブリッド成形は、「量産性 × 高性能 × 設計自由度」の三立を目指す設計思想に合致しており、今後さらに普及が進むと予想されます。もちろん、EU圏との政治的な綱引きもあると思いますが…。
当店の「EUROBIKE 2025」関連記事は、コチラをご覧ください。
※各パーツの詳細&セッティングに関するご質問は、当社ノウハウもございますのでご遠慮ください。
当店の完成車&ホイールの在庫リストは、https://www.avelotokyo.com/p/sale_11.htmlをご覧ください。
お問合せは、info@avelotokyo.com または、070-5075-8192 まで。