2025年7月21日月曜日

Air China / 中国国際航空で行くドイツ フランクフルト ゼロ泊 弾丸往復50時間 EUROBIKE 2025 / ユーロバイク 2025 | EUROBIKE 2025 出張記

EUROBIKE 2025 会場

2025年6月下旬、ドイツ・フランクフルトで開催された「EUROBIKE 2025」へ出張してまいりました。昔の話ですが、店主が台北ショーに通い始めた頃、取引先の同世代の社長さんから「スポーツバイクを事業の中心にするなら、EUROBIKEに行くべきだ」とアドバイスを受けました。

ただ、当時のEUROBIKEはスイス国境近く、ボーデン湖畔のフリードリヒスハーフェンで開催されていました。ロケーション自体は魅力的だったものの、アクセスが悪く、ホテルは開催の一年前から予約が必要。しかも宿泊費は高額で、費用対効果を考えると、気軽に訪れることはできませんでした。

そんな中、2022年以降は開催場所を欧州屈指のハブ空港であるフランクフルト空港(FRA)近くの Messe Frankfurt に移転。それなら日帰りでの往復も現実的になりました。

一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、各航空会社は航路の見直しを余儀なくされ、北回りまたは南回りの迂回ルートを採用しています。その結果、飛行距離が延び、所要時間の増加や運賃の上昇傾向が見受けられます。


Air China(中国国際航空)
HND →PEK→FRA 往復50時間の旅程

一般的なルフトハンザなどの直行便を利用すると、エコノミーでも往復25〜30万円ほどかかります。航空券を安く抑えるため、あれこれ検索することに。LCCの SCOOT を使ってSIN→ATH→別LCCで FRA、あるいは韓国やドバイ経由便も候補に挙がりました。

費用や搭乗・乗継時間を総合的に検討した結果、最終的には「Air China(中国国際航空)」便で、HND→PEK→FRA を選択することに。これなら往復のチケット代は11〜13万円程度に抑えられ、早朝FRAに到着して滞在13時間を挟んで同日夜には帰国便へ搭乗できます。

中国系航空会社の特徴として、他国の便が回避するロシア上空を直線的に飛行する航路が挙げられます。これにより、所要時間の短縮や運賃の抑制につながっている面もあります。

EUROBIKEの会場で、中国・厦門から出展していたメーカーの方と話したところ、彼らも北京経由のAir Chinaを利用したとのことでした。てっきり香港か上海経由だと思っていたので、少し意外でした。
新宿にあるインターバンク

アジア方面への出張時は、為替レートや手数料を考慮すると、現地空港での両替がお得です。一方、サービスフィーが高めなユーロ圏では、日本国内で両替しておいた方が割安になるため、事前の都内出張時に少額ながらユーロへ両替しておきました。

今回利用したインターバンクさんは、日本を訪れる旅行者にも知られているようで、行列ができており、外国人の割合は体感で半分ほどといった印象でした。

HNDではセルフチェックインが可能で、乗継チケットも発券されました
一方、FRAではセルフチェックイン不可でした
HND・LCC勢お馴染みの最奥ボーディングブリッジ(ランプバスじゃないだけマシ)

HND→PEKへ
深夜のPEKに到着
主にコーヒーショップになりますが、PEK内で24H営業店あり
Starbucks Coffee
人民元とアリペイが使える自動販売機
PEK→FRAへ
Frankfurt (Main) Messe 駅
EUROBIKE 最寄り駅

早朝にFRAに到着。大混雑のイミグレーションを通過した後、短時間ではありますが市内を散策し、EUROBIKEの最寄駅であるFrankfurt (Main) Messeへ向かいました。駅改札は会場の入り口に直結しており、そこでチケットを提示すれば入場手続きは完了です。

台北ショーと異なり、Messe Frankfurt全体が隔離された構造になっているため、場内でフロアを移動しても都度チェックを受ける必要がなく、ストレスを感じることはありません。ちなみにビジネスデーも入場券は有料で、72€≒12500円(公共交通機関の一日乗車券含む)が掛かります。大口出展者だと招待枠もあるようですが…。

EUROBIKE 2025 会場MAP

Messe Frankfurt
EUROBIKE 2025 会場
igus / イグス ブース
igus / イグス ブース

台北/台中/上海のサイクルショーでもお馴染みの「igus(イグス)」。近年では、インドでの出展が目立っており、その背景には旺盛な製造業の進出があると考えられます。

同社は以前から、回転成形&再生プラスチックを用いた自転車フレームやパーツ類を展示していました。当初は参考出品レベルかと捉えていましたが、徐々に洗練されてきており、ENGEL社の動向も踏まえると、最近では「かなり本気なのでは?」と感じています。

PIKAPAK | ONE

近頃はあまり見かけなくなりましたが、秋葉原や大阪日本橋で購入したPC/テレビ/炊飯器等の家電製品をハンドキャリーで持ち帰る人向けに販売したら、ウケるのではないかと密かに思っているのが「PIKAPAK | ONE」。店主は勝手に「紐パン・バッグ」と呼んでいますが、Green Product Award他も受賞しているプロダクツです。

Radfahren FFM ブース

「Radfahren in Frankfurt」は、フランクフルト市が運営する公式の自転車ポータルサイト。都市内の自転車利用を促進し、インフラ整備や市民サービスを紹介しています。

オープニングセッション
EUROBIKE AWARD
台北&上海ショー同様、Youtuber/Shane Miller氏と出逢うことに
余談ですが、ゲイリー・フィッシャー氏の元気なお姿も拝見しました
BIKE AHEAD COMPOSITES | THE SUPERFAST
BIKE AHEAD COMPOSITES | THE SUPERFAST
BIKE AHEAD COMPOSITES | THE SUPERFAST

THE SUPERFAST」は、Bike Ahead Compositesが手がけるグラベルバイク開発プロジェクトであり、同社の技術力とコミュニティとの共創姿勢を象徴する取り組み。本プロジェクトの開発手法は、ユーザーからの意見を積極的に取り入れるクラウドデザイン型アプローチである点が特徴的です。

設計段階から、3Dモデル/ジオメトリ/塗装/パーツ構成などをSNSやブログで公開しており、現在のプロダクト開発のトレンドを反映した先進的な取り組みとも言えます。ただ、店主自身の機械設計経験を踏まえると、工業製品も突き詰めればアートに近い存在だと捉えています。

ブレインストーミングや集合知によって、一定の完成度を持つ製品が生まれることはあるかもしれません。しかし、本当に優れたものやトキメキを生み出すためには——天才とまでは言いませんが——高い感性と技能を持つエンジニアが、自ら基本仕様や設計思想を描く必要があると考えています。もちろん、ある程度の規模になれば分業体制は避けられません。ただし、肝心な部分については、方向性を定める「柱となる存在」が明確に設計思想を示すべきではないかと。

昨今のAI実用化によって、コーディング同様にメカニカルデザインの現場も大きく変わりそうですが、だからこそ「人が構想・設計する意味」について改めて問われているようにも感じます。

バイクパッキングならぬ「Bike Packaging」
プラスチック廃止やD2Cの流れもあり、この手のサービスを目にすることが増えました
CSTに空目するベトナムの「CBI / CAROL BIKE INDUSTRIES COMPANY LIMITED」
AXA Bike Security | AXA FOLDABLE 6-95
AXA Bike Security

AXA Bike Securityは、オランダを拠点とする自転車用セキュリティ製品の専門メーカー。Gazelle/Batavus/Kalkhoffなどの自転車メーカーへOEM供給してます。AXAは、Allegion傘下ですが、同グループにはスマートロックのSchlageの他、Kryptoniteも含まれます。更に2025年6月は、Elatecグループを買収してRFIDリーダー分野を強化してます。

White Industries / Rolf Prima

アメリカ系パーツブランドは、アジア圏のショーには出展することは殆どありません。ざっくり言って、EUROBIKE/Sea Otter Classic/MADEぐらいなので貴重な機会になります。

MAGIC MILK

MAGIC MILKは、イギリス発のタイヤシーラントブランドで、OKO Groupが農業/鉱業/トラック/軍用車両市場で培った工業用シーラント技術を、自転車向けに最適化している点が特徴。スイスのMTBレジェンド、Nino Schurterを擁するSCOTT-SRAM MTB Racing Teamでも同製品が採用されているようです。

Messe Frankfurt
ミーティングに特化した小ブース

情報発信や企業間ミーティングの主軸がWebに移行するなか、こうした費用のかかる展示会の存在意義や出展の効果が改めて問われています。時代の潮流に即して、出展を見合わせるメーカーやブランドが増加しているのも現状です。

ただし、こうした大規模展示会には、各国からバイヤーなどの関係者が集まるため、近隣のホテル等でプライベートショーを開催するケースも見られます。また、展示会場内においても、コストを抑えたミーティング特化型の小規模ブースで対応する企業が増加傾向にあります。

店主がこうした展示会に足を運ぶ動機は、目当ての本をAmazonでピンポイントに検索する行為というより、書店に足を運び、トレンド全体の流れを俯瞰しながら偶発的な出会いを楽しむ――そんな感覚に近いのかもしれません。

人間のパートナー選びもマッチングアプリの活用が当たり前になった時代において、そんな前時代的な「めぐり合わせ」を期待するのは、ある種のファンタジーだという認識はありますが…。

EUROBIKE 2026:6/24-28 開催予定
帰国便もロシア上空を飛ぶルートでFRA→PEK→HND

日本への帰国便では、PEKでの乗り継ぎ時間が5時間40分ありました。せっかくの機会だったので、短期入国して「太古里三里屯 / Taikoo Li Sanlitun」を視察してきました。


最期にEUROBIKE視察を終えての雑感を…。

モータリゼーションやプラザ合意などの影響により、1970年代のピーク時と比較して市場規模は半分以下に縮小しましたが、日本の自転車市場は年間約480万台という販売台数を維持しており、依然として一定の規模を有しています。ただし市場構成は、いわゆるママチャリや子乗せ電動自転車、シニア向けモデルに大きく偏っており、カテゴリの広がりの面では課題が残されています。

一方、世界の自転車市場の中心はやはりヨーロッパ。欧州企業が注力している主力製品はE-BIKEですが、市場のバリエーションの豊かさや競争の熱量を肌で感じることができました。改めて「自転車の主戦場はヨーロッパ」なのだと実感しました。

以前は展示車体のうち約7~8割がE-BIKEと言われていましたが、今回の体感では9割以上がE-BIKE。電動化の波がさらに強まっている印象です。

台北や上海の展示会と比較すると、英語圏の自転車メディアが多数来場しており、特にPlay Sports Network傘下のGCN系列は大規模な取材陣を投入していました。その取材規模からも、欧州市場に対する注力度が伺えました。

なお、ブース規模と企業プレゼンスは必ずしも一致するものではありませんが、シマノの存在感が際立っていました。また、地元ドイツ企業ということもあり、ABUSのブースは非常に大きく、予想を大きく上回るものでした。ブランドの地元戦略やEU市場での展開に対する意欲がうかがえる構成でした。


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