組立整備作業における「追いタップ(再タップ)」処理。フレームメーカーやパーツサプライヤのQC改善により、このような作業は減る傾向ですが皆無にはなっていなのが現実です。今回は、タップ深さが不足していたのですが、盲目的に締め付けトルクだけに頼ると、このような加工不良を見落とすことになります。
ちなみに、締付トルクは「弾性域締めつけ」だとバラツキ易く、潤滑有無でも変動するので、当店ではあくまで目安と捉えています。「東日製作所 FCON 軸力安定化剤」を用いるのも一手ですが、例えばメーカー違いのパーツを組み合わせの場合、ハンドルバー外径とステム内径で公差が異なるので意義は薄くなります。
BB/ヘッドチューブ/ディスクブレーキキャリパ台座/ドロップアウト等におけるフェイシング/リーミング処理含め、無暗に削れば言い訳ではなく、状況に応じて適宜処理をすべきというのが当店の考えです。
組み手としては、「現物合わせ(現合)」を便利な枕詞として使ってしまいますが、機械の大原則は、「図面が正」です。追加工するにも、常に基準寸法/面/線から追いかける必要があります。まあ、屁理屈はともかく形にしなくては我々の仕事は終わらないのですが…。
さて、話が脱線しますが、YoutubeにUPされたトヨタの元町工場「GR FACTORY -Production Story-」。その中では、予めボディと足回りを計測して、積上げ公差が設計値の中央値に近づくように組み合わせを最適化するシステムを導入しているのが伺えます。「LOVECARS!TV!」で、より詳細な動画が見れるので、興味のある方は併せてご覧ください。
バックラッシゼロの減速機を組立てるかのように、公差内でバラツキのあるパーツを選定して工程に流しているのですが、スポーツカー製造ラインとは言え、量産車でここまでやっているのはスゴイなと思う訳で。
他社のタイプR/WRX/GT-Rの製造ラインでも、中央値へ寄せる公差の最小化は取り組まれていますが、GRラインのように、職人技でなく仕組みとして「すり合わせ」を実現しているのは痺れさせられます。