2026年5月12日火曜日

SHIMANO ICE TECHNOLOGIES FREEZA | シマノ アイステクノロジーFREEZA 3層クラッド ディスクブレーキ ローターについて改めて考える

シマノ ICE TECHNOLOGIES FREEZA ディスクブレーキ・ローター

シマノ製のディスクブレーキでは、小さなローター径&キャリパの厳しい条件下でも、フェードやベーパーロック現象を起こさぬよう放熱を確保するため、Advanced・グレードは、拡散接合によるステンレスでアルミをサンドウィッチしたICE TECHNOLOGIESを。さらに上位のUltimate・グレードは、アルミ部を延長して放熱フィンにしたICE TECHNOLOGIES FREEZAを採用してます。

このステンレスとアルミの利点を組み合わせた複合材は、住友金属直江津(現在は日本製鉄傘下)が開発・製造する「3層クラッド鋼板」を用いられていることが知られています。この特殊鋼板は異種金属を積層し、加熱した状態で圧延することで強固な接合を実現する「温間圧延接合法(ロールボンディング)」で量産されてます。

厳密には高温拡散接合(長時間の固相拡散)ではなく、塑性変形による酸化膜破壊と金属間の機械的・金属学的接合と言えます。クラッド厚鋼板は資料を見ると工程は異なりますが、学術レベルでは、実用化が期待される核融合炉の構造体への応用も研究されています。

  1. 素材:母材としてアルミニウム、外層にはステンレス鋼やチタンなど。
  2. 加熱:素材を均一に加熱するため、直接通電方式の加熱装置を使用。
  3. 温間圧延(ロールボンディング):加熱後、所定の圧下で塑性変形させ、酸化膜を破壊して金属同士を接触・接合、広幅のクラッドコイルを形成。
  4.  巻取:単一工程でクラッドコイルを製造し、最終製品として仕上げる。
母材がスチールのクラッド材は、真空や不活性雰囲気での処理が必要ですが、アルミを用いる場合は、それらが不要ゆえ大気中で温間圧延接合法を適用でき、設備投資ならびにメンテナンス負担を大幅に抑えられるとのこと。

本技術は IH 調理器用の器物や高機能材料の製造にも応用されており、従来の単一金属では得られない特性を付与できます。シマノがディスクブレーキローター材として採用したのも、耐摩耗性・放熱性・軽量化を同時に満たすためです。

おそらく切板orコイル状でシマノに納入されて、最終加工されているものと考えられますが、「ICE TECHNOLOGIES FREEZA」ローターのアルミフィン部分は、どのように成形されるのか気になります。もしかしたら、フィン付きは工程が違って内製化しているのかもしれません。

同工場の工程や技術内容に関しては、下記をご覧ください。

なお、日本製鉄は2020年2月に発表した生産構造改革の一環として、チタン事業の一部である「丸棒」と「溶接管」の生産・販売から撤退済み。採算悪化と需要構造の課題が理由で、関西製鉄所製鋼所地区と九州製鉄所大分地区の設備を休止・集約。一方で、純チタンやその他の高機能チタン製品の事業は継続しており、事業の選択と集中を進めています。

新潟県上越市にある日本製鉄株式会社 東日本製鉄所 直江津地区は、高品質なステンレス鋼やチタン製品(TranTixxiiなど)を製造する拠点であり、その技術力は建築材/自動車部品/スポーツ用品などで利用されています。シマノでは、上記3層クラッドローターの他にチタン製スプロケットも同工場で生産された鋼板を採用しているようです。

シマノ RT-CL900

アルミコアのサンドイッチ構造ローターの話に戻ると、2010年に発表された「SM‑RT98」を初めて見たとき、アイデアは優れているし量産化も見事だと感じました。しかし同時に、熱膨張率の異なる素材を組み合わせる以上、構造としては“バイメタルサーモスタット”に近く、不安定な挙動を示すのではないかという懸念もありました。

この歪みを抑えるには高度な設計が不可欠であり、当時は「ステンレス一枚物のほうが素直なのではないか」とも考えていました。実際、その後にロード専用として登場した初代ローター「SM‑RT900」は、巻き込み対策など新要素を盛り込んだこともあって、ロバスト性が十分とは言えなかったというのが正直なところです。

ただ、その後のエンジニアの奮闘により、リーク情報では 初代SM‑RT900を基準に、RT‑MT900で変位量が約1/2、現行RT‑CL900では約 1/5 にまで低減されているとされ、実際にその進化を実感できます。

技術の核心部分は公開されていませんが、公開情報をつなぎ合わせると、プレスラインのない立体的な椀状フィンが意図的に残留応力を作り、アルミとステンレスの熱膨張差を抑え込む設計になっているように読み取れます。

しかし、同じ速度域でも回転数が高くなる小径車や、ハードなライディング、体格の良いライダーでは、ダウンヒルでのロータータッチは依然として発生します。特にローター摩耗が進んで薄くなると、熱膨張を抑えるバランスが崩れ、シャンシャン音が出やすくなる傾向に。もちろん、平温時の平面度をどこまで追い込んでいるかにも左右されます。

シマノ製ローターは初期厚が t = 1.8 mm、摩耗限界が 1.5 mm に設定されていますが、経験的には アイステック仕様は 1.65 mm を下回ると板金補正が難しく、ロータータッチも出やすいように感じています。

また、母材がアルミである以上、外力に弱く変形しやすい点は避けられません。そのため、輪行や車載が多い方には、ブレーキタッチの好みはあるものの、当店では剛性の高いステンレスローターを推奨しています。

過去のポストでも触れましたが、外野が無責任に何でも言えることは承知の上で、店主個人としては、シマノさんはCUES導入時にローター厚を2.3mmに移行すべきだったのではないかと今でも思っています。


※各パーツの詳細&セッティングに関するご質問は、当社ノウハウもございますのでご遠慮ください。

当店の完成車&ホイールの在庫リストは、https://www.avelotokyo.com/p/sale_11.htmlをご覧ください。

お問合せは、info@avelotokyo.com または、070-5075-8192 まで。