2020年11月20日金曜日

Apple Mac M1チップ シフトで考える 自転車界のIntel シマノの立ち位置 2021 新型 Dura-Ace 予想

YouTube/SHIMANO EP8 battle tested at the e-MTB worlds in Leogang

シマノの新型e-Bikeエンジン「EP8」のプロモーションで、e-MTB Cross-Country World Championshipsでのテスト風景がYouTubeで公開されています。PCのキーボードから分かるように日本人エンジニアが帯同して、現地でエンジン(=ドライブユニット)のパラメーターを調整しているので、開発が堺マターなのが窺えます。

日本国内では分かりにくいですが、今のシマノ最大ライバルは、SRAMでもCampagnoloでも無くてe-Bikeエンジンのシェアを握っているBoschです。現時点では、エンジンはBosch製でも変速機等コンポーネントの大半はシマノなので、同社は収益を確保できてます。

しかし、変速機が内装化されてエンジンと統合されると、Boschに主権を奪われかねません(ちなみにパナソニック・エンジンは、内装2段変速を実装済)。店主は、e-Bike市場で台頭してきたBoschがSRAMを買収するのでは過去に予想していましたが、内装変速化+エンジン統合の未来を考えると、それは無いなと今は考えています。内装的カラクリなら、自動車分野等で持っているBosch自社リソースを活用できるからです。

この状況を踏まえると高価格帯コンポ市場に於いて、シマノが社運をかけて開発リソースを注力すべきはDura-AceやXTRでは無くて、e-Bike用エンジン&変速ユニットだと言う経営判断がされてます。

一方、エントリー&低価格帯のコンポですが、大手完成車ブランドは、購買での価格競争を仕掛けたい意図もあり、シマノ外のmicroSHIFTを採用し出しています。更にCorvid-19の影響による急激な需要の高まりに、シマノの部品供給が追い付かないことを言い訳に自社ブランドパーツへ置換する可能性が考えられます。

すでに各社は、CADEX/Bontrager/ROVAL/HollowGram等の自社ブランドを保有。当初こそライトやボトルケージ等のアクセサリぐらいでしたが、収益性や競争力UPを狙ってホイール/コクピット/クランク/ペダル等も自社品にスイッチ済です。

元々ファブレスな自転車業界、残りの聖域とも言えるドライブトレーン・コンポーネントも取り込むには良いタイミングとも言えます。乱暴な言い方をするなら、自社商品に最適なコンポ仕様をmS/SENSAH/TEKTRO/S-Ride辺りにOE丸投げして、自社ブランドのデカールを貼れば完了です。安定した品質確保は大変ですが…。


Apple Event — November 10 より

さて、Appleは2020年6月のWWDC 2020で次世代macにARMベースのプロセッサを採用することを発表。その予告通り、直近の「Apple Event — November 10」にてIntel→CPU/メモリ/GPU等を統合したSoC「Apple Silicon / M1チップ」へ移行した製品を上市しました。

これは、PC基準でスマホ&タブレットへ移植する流れだったものが、ソフト/ハード共に逆になったことを表していて、今後はAppleに限らず他社も同様の生産プロセスを用いたSoCを投入、業界全体がパラダイムシフトする可能性も含んでいます。故Jobsが、MacWorld 2008でマニラ封筒から取り出して始まった薄型ラップトップのように。

従来の高性能CPUとARMをクルマで例えるなら、「大排気量+ターボ」と「ハイブリッド」のような違いなので、動画編集や3D-CADなら現状はハイパワーCPU+GPUでゴリゴリ処理が有利なようですし、先行するSurface Pro Xだとx64(64bit)アプリはエミュレート不可といった互換性の問題も抱えています(そもそも、ARM64bitは過去を断ち切ったアーキテクチャーゆえ、互換性云々はお門違いかも…)。余談ですが、世界最速のスパコン「富岳」もARMベースで、TSMC製の富士通SoCデバイスとのこと。

ちなみに「ARM Holdings」は、ソフトバンクグループが買収&NVIDIAに売却したことで、日本でも多くの方が知るようになりましたが、設計のみを行うファブレス企業。同社アーキテクチャは、「省電力/高い自由度/安価」の特徴を持ちモバイル機器で広く普及してます。

更に2020年後半、半導体業界は巨大M&Aで騒がしくなってきています。そんなこんなで、IntelはPCやサーバー分野でシェアは依然高いものの、AMDの猛追やAWSのARM採用などで一強時代は脅かされているように見えます。

一方、自転車業界のIntelと呼ばれてきたシマノ。これまで、SoC的とも言えるSISやデュアルコントロールレバー等のインテグレーション戦略で自転車市場を占有してきました。ただここに来て、高価格なe-BikeではBoschエンジンを追う形に、低価格帯はサードパーティー勢に徐々に侵食される気配があります。

すでにSpecializedは、BroseMahleとパートナーシップを結び自社製のe-Bikeエンジンを搭載。同様に他ブランドも自由度が高いARM的な独自コンポを採用する可能性は否めません。それが各社で進むと、ビッグスポンサーであるシマノがUCIに圧力を掛けて、レースで使用可能なコンポは汎用品に限ると言ったフレーム同様のルールが追加される未来が訪れるかもしれません。

そんな状況の中、2021年3月に創業100周年を迎えるシマノ。そこで発表されるだろう新型 Dura-Aceを、Apple新製品予想並みの無責任に占ってみると…。
  • マイクロスプライン&12s化:もはや既定路線
  • ワイヤ式シフト・ケーブルピッチのロード/MTBの共通化:両者の構造が近寄って来たので、一番期待したい案件。ミックスコンポでの自由度が広がります。
  • HOLLOWTECH 3:T47&386EVOベースでBBスピンドル径の拡大。もし導入されたら、それまでφ24が最適解としてきたシマノがどんな理由付けをするか楽しみ。スルーアクスル化やBOOSTにより、チェーンラインが外側にオフセットした辺りになるかと。軸径UPは、パワーメーターのバッテリー収納にも有利。
  • Di2の(セミ?)無線化:現行Di2は2線式の直流PLC(Power Line Communication)。e-Bikeエンジンに用いられるブラシレスDCモータは低ノイズですが、その対策や拡張性を含めてプラットフォームへ移行することも考えれます。
「信じるか信じないかは、あなた次第です!」

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