2021年12月16日木曜日

新 R9200系 DURA-ACE & R8100系 ULTEGRA 考察

外野から見ると、ヒト/モノ/カネ/情報のリソースが存分にありそうなシマノの製品開発環境ですが、工業製品を上梓するのは、リサーチ/基礎研究/構想/設計/試作/改良/生産技術/調達/量産試作/不良対策等で、多くの人が多岐にわたる課題をクリアしたり、会社間や部署間の調整を経た結晶なので、やはり「言うは易く行うは難し」を忘れちゃダメなんだと思うわけです。それを踏まえて新型R9200 DURA-ACE/R8100 ULTEGRAを紐解いてみようかと。

リムブレーキ終盤のロードバイクは、枯れた技術の集大成とも言えることからリフレッシュでコンポ載替えも一手でしたが、ディスクブレーキ搭載モデルは、未だ発展途上ゆえフレーム最適化や技術進歩のスピードが増して、快適性や性能を追求するならMTB同様に完成車を数年単位で入れ替えて、消耗品のみを交換するのが経済的と店主は考えています。自転車屋としては失格ですけど。

所詮、趣味なので楽しみ方は人それぞれですが、今回のR9200/R8100の場合、セミ無線専用の新プラットフォームに合わせて設計された完成車導入をお勧めしています。そんなこんなでコンポセットの初回オーダーを見送った当店ですが、ひょんなことから新型Dura-Ace/R9200系をオサワリする機会を得ました。

確かに変速フィーリングは、前評判通り上質に。好印象だったのは、STレバーの握りやすさ。R9100/R8000で不満だったブラケットカバー(=ラバーフード)の緩さも解消されてます。正直、前作は後発の下位グレードの方がピタッとしてました。

現行のXT(M8100)とSLX(M7100)が同時公開だったのを見て、当時はアルテグラと105も同様の流れになるかもと思っていましたが、夏の正式発表は、ほぼ事前に漏れ伝わっていた情報通りでした。最初の店主感想は、思いのほか純粋なロードレーサー用コンポーネントに仕上げてきたなというところ。

ロード/グラベル/MTB等、細かなカテゴライズは非効率な生産体制になるので、ロードがグラベルに寄せて来るんじゃないかなとも考えていましたが、逆にそこはGRXに専業させてアルテグラにあったCX要素は廃止されました。そうすると、ティアグラやSORA辺りが、用途的にもグラベル・コンパチになるかもと推測してます。

市販グラベルバイクが流通しだした2015年頃から、店主はロードとMTBコンポをチャンポンできる方が自由度が高くて望ましいと思っていたのですが、シマノはケーブルピッチ諸々でハードルがありました。ギア比諸々を考えたらグラベル専用コンポだろというのが同社GRXで、チャンポン優等生なSRAMも結局は同じ方向になりました。


総括的な話は、CyclingTipsでお馴染みのangry asianことJAMES HUANG氏が概要ライドレビューをしているので、ご覧になっている方も多いかと。

1.Di2のみの展開
店主は、過去に11sの9000系はDi2のみの展開になるのではと推測していましたが、一周遅れで当たった感じ。R9100系だとブレーキと変速機構の組合わせでSTレバーのみでも4種もあって、非効率な生産体制だし利益率を考えたら、そうなりますよねと言ったところ。

逆にリムブレーキ用で、新E-Tubeに合わせたSTレバーを新たに起こしたのは意外でした。反面、OLD142mmに最適化が進んだクランクセット(Qファクター148mm/チェーンライン44.5mm)は、OLD130mmとの組み合わせでストレス無く使えるのかしら?とも。

2.セミワイヤレス・Di2
制御系をRDに集約した新システムですが、グラベル・CXのフロントシングルも見据えた構成と推察。シマノ ヨーロッパのプロダクトマネージャーでメディアにもよく見かけるTim Gerrits氏がGCNのインタビューで語っていますが、ワイヤレスDi2は、前作9100系の導入予定で開発を進めたが、当時はヘリコプター&テレメトリーの電波干渉の回避や信頼性の問題を解決できず見送った模様。今作は、パケット長が短いプロトコルで開発をゼロからやり直したみたいですね。

3.ハブ&ホイール/WH-R9270/WH-R9270/WH-R8170
フリーハブの説明動画を見たとき、以前のXTR他でお蔵入りになった「SCYLENCE/サイレンス」が3度目の正直かと鼻息が荒くなりましたが、そこから技術を切り出したFH-M9111同様の「Direct engagement/ダイレクトエンゲージメント」でした。

店主は、先行で12s化したM9100系XTRデリバリーされたときに、ロードもマイクロスプライン導入を予想していました。ただ、シマノはかなり早い段階で53T超のチェーンリングと10Tコグ組合わせを泥臭い検証まで済ませ、11T以上が必要との結論を得ていたようです。

トップ10T採用を見送ったこともあり、12s用としてスプライン増やしてフリーボディ噛込みを対策しつつ、従来の11sにも互換性を持たせたのはナイスアイデア(スプライン山が低く根本解決になって無い感は残りますが…)。当初予定していた11-28Tスプロケットのデリバリーは、かなり先になりそうです。

7800系上梓時における10s専用フリーボディ導入のネガティブな市場反応が、トラウマなのかと思っていましたが、前述のTim Gerrits氏がroad.ccでの喋りを見ると直近の11s化での市場反応が教訓とのこと。振り返るとMTBは8~11sまで共通なのに対して、ロードは10sの一時専用化+11sボディ延長した規格遍歴を経ています。

リムは、デュラとアルテで同じ素材&プロセスのようですが、半導体チップセット(SoC)の歩留まり改善同様に出来がよいものをデュラに回していると推察されます。

シマノ公式 互換性情報 バージョン 3.2 更新日: 2021年9月22日より

4.ディスクブレーキ/ST-R9270/BR-R9270
ロータークリアランス拡大に関しては、制約の中で絞り出した改善でしょうが10%って片側+0.03mm程度ゆえ、ロータータッチが皆無にはならないんじゃないかと。

アプローチは、キャリパのシール線径の太化or硬度を上げて復元力を増して、待機位置を後退させていると推測しています。ピストン素材のセラミック→レジン変更は、摩擦力調整が理由の一つかもしれません。

ストロークが増えるので、STレバーのマスターシリンダは大容量化or初動リンク比を大きくしているはず。ワイヤレスDi2のみの展開になり、自由度が増して再設計できたからじゃないかと。一方で、電池や無線ユニット配置で機械/電気エンジニア間でスペースの取合いになったのも予想できます。

互換性情報が更新され、旧STレバー+新キャリパーが互換OKとなりました。ロータークリアランスの恩恵は受けられますが、上記理由で引き代は大きくなってB互換程度になりそう。充填量を規定より増やせば解消できるかもしれませんが、ロバスト性が落ちるかと。

ちなみに互換チャート見直しの理由は、下関工場の負荷低減かと勘繰りましたが、12s環境でST-R9180を使えるようにするためらしいです。

もし、緒言に反して店主がバラ完で組むとしたら、クランク長展開と見た目でアルテ主体+クランク/ブレーキキャリパ/ローターのみデュラになるかと。

※取付&加工法や使用パーツ等のご質問は、当店ノウハウのため、お応えしかねますことをご了承ください。

お問合せは、info@avelotokyo.com または、070-5075-8192 まで。