2025年1月11日土曜日

シマノ 12s-11sチェーンの違い & 12sドライブトレーンに11sチェーンリングが不適合に関する考察

FC-R8100 12s クランクセット
アルテグラ R8000 11s ドライブトレーンとミックスビルド
殆どのケースで支障なく動作する組み合わせ

過去にポストした「シマノ 11sコンポ × 12s用クランク 互換性 検証 | シマノ アルテグラ R8000 ドライブトレーン × FC-R8100 クランク ミックス ビルド」でも触れましたが、シマノ環境下で11sドライブトレーンに12sクランクセットを組み合わせ場合は、殆どの場合は支障なく動作します。一方で、その逆の12sトレーンに11sクランクセットだと高い確率でジャム等トラブルが生じるようです。今回は、その原因を考察してみようかと。

シマノ 12sチェーン CN-M7100:外プレートくびれ幅6mm

シマノ 11sチェーン:外プレートくびれ幅5mm
上:CN-LG500/LINKGLIDE
下:CN-HG901

他社同様にシマノにおいても11s→12sの更なる多段化で、チェーン厚を抑えるべくプレートが薄肉に変更されています。12sチェーンの外観で分かりやすい設計変更は、外プレートのくびれ幅が1mm広くなっている点です。

単純にチェーンを薄くすると、引張/ねじり強度が低下するので、SRAM Flattopと同様に断面積を稼ぐ設計思想が伺えます。余談ですが、生産技術者の目線だとワークの裏表/方向性が増えると、パーツフィーダーの設計が大変なんだよと遠目になります。昔は、振動数とガイドで整列させる職人的設計が主でしたが、現在は低価格化や高精度が進んだカメラを用いた方がリーズナブルに思えます。

閑話休題。これらチェーン厚やクビレ形状の変更は、12sトレーンに11sクランクセットを組み合わせた際のスパイクピン掛かりやすさに影響しそうですが、致命的では無いと捉えられます。
シマノ 12sチェーン CN-M7100
シマノ 11sチェーン CN-HG901

上記の分かりやすいプレート薄肉化に加えて、12sチェーンは内プレート両端に面取りされた「ツバ付き」になっているのが特徴です。ローンチ時、シマノ社からは3D加工云々の話が合った気がします。

この「ツバ付き内プレート」が原因の分かりやすいトラブルが、シマノ・MTB12sコンポーネントをデリバリー開始した際に露呈した、サードパーティ製ナローワイド・チェーンリングとの不適合でした。

フロントシングル(1X)環境において。11sで使っていたナローワイドチェーンリングを12sチェーンと組み合わせると、厚歯部でチェーンが浮いたり、歯離れ(=噛離れ)が悪くなる症状が発生。チェーンリングメーカー各社は、歯先の肩を面取りして干渉を逃がす対策に迫られました。

サードパーティ製チェーンリングを排除する狙いだったかは不明ですが、このチェーンとリングの最適化に関しては、シマノ公式サイトの「ダイナミックチェーンエンゲージメント+」でも謳われています。

ロードバイクに代表されるフロントダブル(2X)環境下でも、12sトレーンに11sクランクセットを組み合わせた場合、同様にツバ付き内プレートがチェーンリング歯離れを阻害して、ジャムを起こしているものと推察されます。

一方で、12/11sで内リンク内幅は2.2mmと共通ゆえ、もしかしたら「12sドライブトレーン+12sツバ無し社外チェーン+11sチェーンリング」の組み合わせなら、支障なく動作する可能性が考えられます。ただ、そこまでやるなら素直に12s環境で揃えた方が賢明かとも。部品入手性も以前より改善しましたし…。

さて、話は変わりますが、ロードバイクの場合。従来のシマノ11sに比べ条件が厳しいはずの12sの方がチェーン伸びに対して耐性を有する印象があります。チェーン伸びは、内プレート(ローラーリンクプレート)穴とピンの摩耗が主要因とされてます(詳しくは、ライトウエイさんWEBを参照)。

長寿命化は、各素材や処理の細かい見直し、冒頭のプレート形状変更も寄与しているかもしれませんが、先述の「ツバ付き内プレート」が歯先を拘束して、ピン軸方向の摺動を抑制(防振)することで効果的に摩耗しにくくしているものと考えられます。

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