2025年5月25日日曜日

fi'zi:k fizik VEGA CARBON | フィジーク ヴェガ ベガ カーボン 発売開始 ロードバイク ビンディングシューズ 回想記

fi'zi:k VEGA CARBON | フィジーク ヴェガ ベガ カーボン ロードバイクシューズ
カラー:White / White、Yellow Fluo / White
国内展開サイズ:39.0~45.0
価格:68000円(10%税込/予約受付中)
特徴的なソールデザイン
ヒールにVEGAロゴ
厚めなトップリフト

2025年3月下旬から、台湾の販売店さんでフライング気味に発売されていて、NDAとは?と遠い目になっておりましたが、5/21~22にかけて新型フラッグシップシューズ「fizik Vega Carbon」が正式公開されました。

アッパーの素材感からパット見、軽量で高い通気性を誇る「Powerstrap Aeroweave」をベースにBOAを組み合わせただけに見えてしまいますが、ゆとりのあるつま先を含むラスト形状を採用するなどシューズ全体でゼロベースで再設計されています。

特徴的なソール構造
fi'zi:k VEGA CARBON 公式サイトより

fizikのシューズは、担当ディレクターが変わると方向性がガラッと見直されるのが通例です。2024年の秋口にVEGAの先行サンプルを拝見したとき、ずいぶん思い切ったソール設計だと驚かされた反面、このままじゃ量産は難しいんじゃないかと訝しんでましたが、その姿をほぼ踏襲した形で製品化を実現しています。

カーボンアウトソールをアッパーに接着する従来のシューズとは異なり、VEGAはアウトソールをシューズ内側に配置。インソール→アウトソール→クリートとダイレクトな構成にすることでスタックハイトを抑えて、ペダリング効率の向上を図っています。

これらは、後述するシマノの「シームレスミッドソール構造」と似たアプローチとも言え、該当特許が切れたのかもしれません。VEGAでは、さらにBOAダイアルで二本のアッパーベルトを引き上げることで、足裏から積極的にフィットさせる設計意図が読み取れます。

従来からスタイリッシュなデザインに定評のあるfizikですが、VEGAは機能面も妥協が無い名品の予感がします。価格は、インフレや円安為替の影響もあり、決して安くはありませんが、従来の旗艦モデルが350~450€に対して390€設定で頑張った値付けが伺えます。

Dura-ace クランクとULTEGRA SPD-SLペダルが
読み取れる宣材写真

余談ですが、2024年に発売された「TEMPO BEAT」同様に、本作VEGAも宣材写真は同社ポートフォリオを無視した大胆なものが採用されています。商品紹介は、BikerumorRouleurをご覧ください。

まあ、御託を並べましたが、いわゆる3つの「ル」と呼ばれる、ハンドル/サドル/ペダルのライダーと自転車の接点は、最新機材が必ずしも正解ではなく、シューズもまた然りです。店主含めたおっさんベテランサイクリストだと、やっぱりシューズはカンガルー革だよなぁの声もあると思います。弊主観になりますが、同革を用いたシューズの国内トレンドは下記のような感じかと。

  • 1980年代後半~1990年代前半:CARNAC
  • 2010年代前半:初代fizik
  • 2010年代後半~:LAKE

スポーツサイクルのメイン市場である西欧では、本革製品に対する受け止め方が、近年は環境意識や動物福祉の観点から変化が見られます。高級素材として認識され、その職人技/耐久性/経年変化を楽しむ伝統的な価値観が残る一方で、動物愛護や環境負荷の観点から、本革の使用を避ける動きもあります。特に北欧やドイツでは、ヴィーガンレザーやリサイクル素材を採用するブランドが増えています。

このような流れを受けて、サイクリング業界でも大手ブランドがグローブやシューズに本革を採用するのが難しくなってきている背景があります。本革特有のメリットもありますが、多くのライダーが求める軽量化や通気性を確保するには、テイジン他が手掛ける機能材が欠かせなく、ここ20年間のシューズ設計は、それら新素材を組み合わせて「硬いソール+しなやかアッパーを組み合わせてBOAで締め付ける」のが王道になっています。

また、欧レースシーンを思い返すと、2000年代初頭ぐらいまでは、トッププロ選手は一見スポンサードされている市販シューズのようでも、実際はソールだけ供給品でアッパー側は靴職人が足型に合わせてビスポークされたものを使っていることが珍しくありませんでした。

最近は、ライダーに合わせた小さなカスタマイズはあるものの、基本的には市販品同等のシューズを使うケースが殆どのようです。しなやかなアッパー素材により万人にフィットしやすくなり、通気性や軽量化が突き詰められてきて、手を加えられる領域が狭くなったからとも言えます。


上記のようなマクロな視点から、一店舗目線に戻すと…。正直なところ、当店の規模ではアパレルの積極的な展開は難しく、他店での購入が主になります。ただ、レース志向でパフォーマンスを重視するライダーから相談を受けた際、ここ10年ほど店主はシマノ「RC9」を勧めてきました。

おそらく2015年だったと思いますが、発売前の初代「SH-RC900」のサンプルを試履したときに、ラスティングボードを廃した「シームレスミッドソール構造」や均一なフィット感から、他社品の数年先へ行ってしまったなと衝撃を受けました。実際、競輪・トラックレーサーの間でも支持されて、紐改造含めBONTと並んで大きなシェアを占めています。

しかし、同社シューズのすべてが良かった訳ではなく、例えばSH-RC701以下の下位モデルは、タン形状がイマイチでした。ただ、SH-RC702以降、その部分は見直されています。


さて、店主自身で使ったシューズを振り返り、幾つかを挙げると。2006年にスペシャライズドがBOAダイアルを初採用したS-WORKS・シューズは、「硬いソール+しなやかアッパー+BOA」を組み合わせた先駆けで異色の出来でした。このアプローチは他社でも取り入れられ、紐靴で具現化したのが「GIRO EMPIRE SLX」かと。

また、2021年に発売された「fi'zi:k VENTO STABILITA CARBON」は、BOAシステムを介して土踏まずアーチを引き上げる独創性に惹かれて試しましたが、店主は期待したほどの土踏まずのフィット感が得られませんでした。

このアイデアは、Alberto Fonte(元Fizikブランドディレクター、Kask/Pinarelloも経歴あり)と、Antonio Geromiletto (元Fizik&Crankbrothersビジネスマネージャー)が興したUdogに引き継がれたと伺えます。

何だかんだと余談を挟みましたが、新作「fi'zi:k VEGA CARBON」のご注文をお待ちしております。


※各パーツの詳細&セッティングに関するご質問は、当社ノウハウもございますのでご遠慮ください。

その他、当店の完成車&ホイールの在庫リストは、https://www.avelotokyo.com/p/sale_11.htmlをご覧ください。

お問合せは、info@avelotokyo.com または、070-5075-8192 まで。