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| YADEA 表参道 |
「事実というものは、注意深く、ゆったり進行するものさ」。戦争や災害を除けば、一夜にして風景が変わることはなく、多くの物事はグラデーションを伴って徐々に変化していきます。携帯端末ひとつを例に取っても、公衆電話 → ポケベル → 携帯電話/PHS → スマートフォンと段階的に移行しており、その過程にはおおよそ10年ほどを要しています。
過去のポストでも触れましたが、店主は2018年頃から、少子高齢化/都市部の居住環境/充電池の高エネルギー密度化等を理由に「2035〜2040年には、自転車は乗馬のように、限られた人が限られた場所で楽しむアクティビティになるだろう」と取引先や同業者に話していました。当時は否定的な意見が大半でしたが、最近では同じような考えを持つ人が増えてきました。
Covid‑19のパンデミックによって、リモートワークは10年前倒しで普及したと言われます。同様にサプライチェーンの棄損と供給の乱れ、先進各国のマネーサプライやロシアによるウクライナ侵攻に端を発する世界的なインフレ、そして円安を背景に自転車の価格は高騰しました。原因はどうあれ、期せずして店主の想定より短い時間軸で、自転車は手が届きにくいスポーツになってしまったのです。
一方、欧州市場を見ると、2010年代前半から都市部での移動手段としてEバイクを選ぶユーザーが増えています。決して安価ではないものの、利便性や走行性能が評価され、シェアを拡大してきました。
ただし、欧州で主流となっているE‑BIKEは、型式認定や販売価格、先行する電動アシスト自転車との差別化が高いハードルとなっており、日本国内にはほとんど流通していないのが現状です。
これに対して、純粋なペダルバイクは趣味性の高い乗り物として位置づけられる傾向があります。その結果、量産効果が働きにくく価格が上昇しやすい土壌が以前から存在し、様々な要因が重なってパンデミック後に顕在化したと考えられます。油圧や電動を含む高性能化、上位モデルへの集約、材料費高騰、為替動向を考慮すると、価格上昇の流れは避けがたいでしょう。
工業製品である以上ヒエラルキーは存在しますが、自転車が高くて買えないと頭ごなしに卑下するのではなく、最新やハイエンドモデル、あるいは「何が何でも105以上」といった思想にとらわれず、各々に合った自転車を選んで楽しんでいただければと思います。
例えば、流通形態は異なるものの2008年に約3万円で購入できたiPhoneは、最新の17では約13万円になっています。それでも皆さんは上手い付き合い方を見つけているはずです。勿論、可処分所得を増やすというのが分かりやすい策なのですが。
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| MATE.BIKE TOKYO 青山本店 |
2018年頃、店主はパーソナルモビリティ(PMV)における自動ブレーキの導入はコスト面から難しいと考えていました。しかし、AIによる画像認識技術が急速に進化したことで、フロントカメラや360°カメラをベースにした自動ブレーキの実現可能性は高まっています。
また、特定小型原付で煩雑になりがちな歩道/車道の速度上限切替についても、GPSやビーコンに頼らずにカメラで歩道と車道を判別して自動的に速度上限を切り替える仕組みができそうです。
自動車の自動運転技術に関しては、ソフトバンクグループが出資したことでも知られる英・
Wayveが挙げられます。高コストにつながる「HDマップ(高精度3次元地図)」や「
LiDAR」不要で独自AIを用いて、20万円程で自動運転機能を付加させることが可能と発表しています。勿論、マーケティングハイプを考慮する必要はありますが…。
カメラを用いた「自動ブレーキ」と「速度上限の自動切替」を、自動車の自動運転技術から切り出すことで、低コストでの実装が可能になると推察します。衝突時の運動エネルギーは速度の二乗に比例するため慎重にならざるえませんが、現行の車道上限20km/hは実用性に乏しい面があります。
「自動ブレーキ+上限速度の自動切替の搭載」と「ヘルメット着用義務化」の二つを条件に、将来的に車道の制限速度を25km/h程度まで引き上げられる可能性が高いと考えます(例えば、特定小型原付一種/二種のような区分け)。
国内において現在の我々は、従来の自転車/電動アシスト自転車/E‑Bike/原付などが時間をかけて「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」へと集約される流れの入口に立っていると考えています。
2026年4月1日施行の改正道路交通法により、自転車の交通違反に対して「青切符(交通反則通告制度)」が導入されます。加えて、ヘルメット着用の「努力義務」から「完全義務化」へと移行する動きが進めば、手軽に使える生活の足(移動/送迎/荷役)として経済合理性から自転車を選んでいる多くのユーザーにとって、従来の法的な緩さや利便性が失われることになります。その結果、モーター付きのモビリティへ移行する流れが後押しされるでしょう。
一般財団法人日本自転車普及協会の常勤理事である栗村修氏も、インタビュー番組「サイ録ch〜あなたの自転車人生、教えて下さい〜」で同様の見解を示しています。特定小型原付を取り扱う自転車販売店も徐々に増えており、イエローハットがワイズロードを買収した理由の一つに、この動向を見据えた戦略があると考えられます。
余談になりますが、BEV+自動運転の普及が進めば、自動車もテレビ等の家電同様にコモディティに。運賃設定にもよりますが都市部は自動運転タクシーが主流になって、マイカーはステイタスとして所有するものとなって個人の所有率は更に低下するものと考えられます。業界団体や規制等によって、各国から相当遅れる可能性も否めませんが。
それを先取りするように米・テスラは、2026年初頭の決算発表で、従来の自動車メーカーから「自動運転(ロボタクシー)およびロボット企業」へと劇的な転換を打ち出しました。モデルS/Xは2026年半ばまでに生産終了、残るモデル3/Yも無人運転に焦点を当てたアップデートに移行。「ロードスター」のみを人間が運転する最後の新モデルとして、ブランドを象徴するフラッグシップの位置付けで生産される見込みです。激しい競争と新陳代謝の中でヒト・モノ・カネが自然に集まる米中企業と戦うのは容易ではないことを示唆しています。
近年のCES/台北ショー/上海ショー/EUROBIKE/Japan Mobility Showなどを見ると、世界各国の四輪・二輪メーカーやスタートアップがこぞって、シマノやボッシュといった従来の自転車向け主要サプライヤーに依存せずにE‑BIKEやE‑PMVの開発を進めていることが分かります。
過去の台北ショーで出展されていた「OOLO」にも触れましたが、店主は短距離向けのパーソナルモビリティ(PMV)は三輪型が有力だと以前から考えており、トヨタはウーブンシティで既に実証実験を開始しています。同社は「C+walk T」や「C+walk S」を既に上市しています。
また、Japan Mobility Show 2025では傘下のダイハツがコンセプトモデルながら、保育園/幼稚園送迎用の電動アシスト自転車からの置換をターゲットに「ママチャリの進化形」とした小型モビリティを発表しました。店主の記憶では、自動車メーカーがこの市場に言及するのは今回が初めてに近いと思われます。
短距離移動や高齢者向け、荷役・送迎用途では三輪型が、電動スクーターに近い二輪型も普及が進むと考えられますが、国内市場はトヨタなどの四輪・二輪メーカーと、電動スクーターで世界的シェアを持つ中国のYadeaやAimaらとの勢力争いになるでしょう。
パナソニック サイクルテック(PCT)も2025年末に「MU」を発表しており、自動運転時代のPMV開発を中期計画に沿って着実に進めているのが伺えます。椿本チエインは電動アシスト自転車「LA SI QUE」に続き、ICOMAと協業して「Full電動Cargo(仮称)」を公開しています。
余計なお世話ですが、東京中心部のように電車や地下鉄をはじめとする公共交通網が緻密に整備されたエリアでは、利用率が頭打ちになり、LUUPのような高機能サービスはバッテリー管理を含む運用コストが重荷となって事業継続が難しいと考えています。特定小型原付の普及と認知が進んだ後は、シェアサイクルは中国本土の都市部で広く使われているような、Meituan BikeやHellobikeと言った運用システムの殆どをスマホに依存したシンプルなペダルバイクへ回帰すると予想されます。
さて、当サイトですが、本来リーチすべきエンドユーザーではなく輪界人に読まれている印象があり、ゴム業界でいう「加藤事務所」のようなポジションになりつつある自覚があります。内容が業界寄りに偏っているのは問題かもしれませんが、それはさておき、自戒を込めて次のように考えています。
「あくまでプレーヤーである以上、評論家的な立場にとどまり何もしないことは死に等しい。自由経済の中で悲観主義に囚われていては何も生み出せず、受け身になってしまう。適度なリスクを取り、自分で手綱を握って生きたいものだと…」。まぁ、そんなこんなで皆さまのご注文をお待ちしております。
※各パーツの詳細&セッティングに関するご質問は、当社ノウハウもございますのでご遠慮ください。