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| Rivian ALSO TM-B (公式WEBサイトから) |
近年のCES/台北ショー/上海ショー/EUROBIKE/ジャパンモビリティショーなどを見れば分かるように、世界各国の四輪/二輪メーカーやスタートアップ企業がこぞって、E-BIKEやE-PMV(E-パーソナルモビリティ)の開発を進めています。
そんな中、数年前からE‑BIKE開発の噂があったRivianが、2025年10月後半に「TM‑B」を発表。YOUTUBEやWEBサイトを見た限りですが、従来のE-BIKE概念を覆すゲームチェンジャーと思わせる革新的な一台です。店主は、以前から自動車会社が本気を出してこの市場に参入して来たら、自身含めて従来のプレイヤーは駆逐されてしまうと危惧していましたが、その始まりかもしれません。
同社はRaphaなどと並び、2025年初頭からMTBライダーのKate Courtneyが立ち上げたチーム「She Sends Racing」とスポンサー契約を結んでいたため、これは何かの布石だろうと動向を伺っていましたが、今回のマイクロモビリティ子会社ALSO(Also, Inc.)による市場投入につながり合点が行きました。
1. ALSO(オルソ)社の概要と組織構造、生産拠点
1.1 会社設立と組織的特徴
ALSOは2025年、米国カリフォルニア州パロアルトを本拠地に設立された電動マイクロモビリティ企業です。ちなみに社長兼共同創業者のChris Yu氏は、Also設立前はSpecializedで10年間勤務しており、記憶している方も多いかと。
同社はEVメーカー「Rivian」からスピンオフ(分社化)する形で誕生し、Rivianとの資本関係は一部継続されていますが、名目上は完全独立した経営体を構成しています。資金調達では設立直後に約2億ドル(約293億円)もの大型出資を獲得し、スタートアップとしては異例の体制で注目を浴びました。
また、ALSOは自社でモーター/バッテリー/電子基板/ソフトウェア/ファームウェア全てを垂直統合で設計・生産する「バーティカル・インテグレーション」戦略を推進しており、従来のE-Bikeメーカーで多く見られたシマノやボッシュと言った大手メインサプライヤーや中国や台湾メーカーの汎用品採用とは質的に一線を画しています。この独自性こそ、ALSOおよびTM-Bの競争力の源泉と言えます。
1.2 生産拠点と技術開発基盤
製品開発および設計は、Rivian内のステルス/スカンクワークス(Project Inder)で進められてきた流れを引き継ぎ、シリコンバレーのパロアルト拠点で完結。生産については北米市場向けを主軸に、自社工場および厳選されたサプライヤー(主に米国内、および規格適合必須部品に限定して一部アジア圏)で組み立て・供給している模様。バッテリーセルは米国調達に併せ、中国他グローバル・サプライチェーンも活用しつつも最終アッセンブリーや品質管理は自社責任で一括しています。
設計思想の根底には「ゾーンアーキテクチャ」「Dream Rideドライブシステム」などの次世代EV技術応用が見られます。これにより、従来の「汎用部品の組み合わせ」型E-Bikeとは大きく異なる垂直統合アーキテクチャを実現しています。
その反面、きら星のごとく消えて行ったスタートアップブランドがそうであったように専用部品で構成された車体は、もし同社が撤退した場合の修理やアフターケアが心配になります。
2. ALSO e-Bike『TM-B』:製品ラインナップと特徴
ALSOのE-Bikeは現時点で「TM-B」シリーズが主力となっています。TM-Bシリーズは以下の3モデルの展開予定です。
- TM-B Base model
- TM-B Performance
- TM-B Launch Edition
3. 技術アーキテクチャ・搭載パーツ・機構の詳細
3.1 「Dream Ride」ペダル・バイ・ワイヤ(By-Wire)推進システム
ALSO TM-B最大の革新要素は、従来の自転車にはない「ペダル・バイ・ワイヤ」=“ペダルの回転を物理的にドライブトレインへ直結しない”駆動系が挙げれます。
この仕組みでは、ペダルは発電用ジェネレーターと直結しており、ペダルの回転力は一旦電気信号として解析された後、ソフトウェアで最適な走行特性に変換されて後輪モーターへ送られます。つまり、「ペダル≠後輪機械連結」であり、“EVのバイワイヤ” の自転車版です。
動力面で人力を内燃機関と捉えれば、日産 e-POWERに代表されるエンジンで発電し、モーターだけで走行する「シリーズ方式ハイブリッド」とも言えるかと。
3.2 バッテリー仕様
- 容量と種類:538Wh(標準)/ 808Wh(大容量)
- 航続距離:60〜100マイル(=96〜160km)
- 電池種別:18650型セルベース・リチウムイオン形式
3.3 モーター出力・性能
- 最大トルク:180Nm(E-Bikeでは突出した数値)
- ピークアシスト倍率:10倍(ペダル入力の最大10倍動力を供給、BASEモデルは5倍)
- 最高アシスト速度:ペダリング時45km/h、スロットル時32km/h(北米Class 3/EU Class 1-2準拠)
3.4 フレーム素材・モジュール設計
- メインフレーム:マグネシウム合金/アルミニウム合金パイプ/亜鉛ダイキャスト複合
- 工具不要のトップフレームスワップ構造(「ソロ」「ベンチ」「ユーティリティカーゴ」「チャイルドシート対応」に換装可)
- 専用リアラック(最大積載34kg/前ラック11kg、MIK対応)
拡張性と耐久性を両立するレゴ的モジュラー設計により、家庭内で複数ユーザー使い分けをしたり、日常・レジャー・業務用スタイルを1台でカバーリング。
3.5 変速機構・ドライブトレイン
- 機械式変速:なし(ギアはソフトウェア制御/自動変速推定)
- Manualモードでは、最大10段階まで設定可
- Gates製ベルトドライブ
- “Dream Ride”ソフトウェア変速:アシストカーブを好みで設定可
3.6 ブレーキシステム
- 種類:油圧ディスクブレーキ
- 機能:AI制御ABS、電子式アラーム連動ロック
- 回生(リジェネ):減速時最大90%エネルギー回収
3.7 タイヤサイズとホイール仕様
- タイヤサイズ:24インチ
- サスペンション:倒立式・前後120mmストローク
- 耐荷重:最大324ポンド(約147kg)
4. セキュリティ・盗難防止・スマート連携
4.1 盗難防止・ロック機構
- 電子集中管理ロック:専用アプリ&スマホNFC連動でロック/アンロック
- 駐輪離脱時自動施錠:物理的ロックも自動化
- 動作検知・異常検知アラート:GPS&LTE通信で位置・異常通知
- ビルトインセキュリティ認証:万一盗難に遭ってもIoT経由で即時「全機能ブリック化」=物理パーツも再利用不可化
- 部品単位に固有シリアル認証を持たせて流通ブロック
- リアルタイムGPSトラッキング
4.2 IoT/スマート機能・OTA
- 中央タッチディスプレイ(“Portal”):5インチ円形 全機能タッチ&物理リングUI
- ALSO公式アプリ:乗車データログ/設定変更/ナビゲーション/リモートロック&アンロック/OTAアップデート/メディア連携
- スマホNFC連携:鍵+ダッシュボード設定
- OTA(Over the Air)アップデート対応
- ナビ連携:到着予想時間(ETA)自動算出/走行ルート案内
5. スマートヘルメット『Alpha Wave Helmet』の特徴
- リリースレイヤーシステム(RLS):4分割されたパネルが衝撃時に衝撃角度を分散、転倒・側面衝撃時の脳損傷リスクを低減
- HighBarストラップ:片手で容易にフィット調整可
- フロント2灯(LED:150lm/50lm)+リア赤色LED+バイオモーション認識
- 内蔵4スピーカー&2マイク(ノイズキャンセル付き)
- ハンズフリー音楽/通話/ナビアナウンス対応
- 自転車本体ディスプレイ/スマホ経由で連携・同期アシスト
このヘルメットは単なる頭部保護だけでなく、IoT時代のコミュニケーション機能も備えています。
6. 価格・販売・メーカー公式・流通体制
まずは米国直販(公式オンライン予約)のみで、Launch Edition $4,500(=約70万円)が販売開始。今後はRivianディーラー経由や欧州展開も予定されています。
7. まとめ:ALSO TM-Bの意義と今後の展望
ALSOのTM‑Bは、EVで培われた垂直統合技術を用いることで、従来のE‑BIKEを抜本的に再定義したと言えます。ペダル・バイ・ワイヤ、ギアレス化、IoTによる集中制御、モジュラー構造、最大トルク値は驚異的。また、ポータルディスプレイ、スマホ、ヘルメットが一体となったシームレスなUX/UIや、徹底した盗難対策も目を見張ります。
E‑BIKEというより新しいカテゴリーのモビリティ、あるいはE‑BIKEとペダルレス・E‑PMVの中間に位置づけられるだろう。同社は将来的に商用配達用カーゴや多目的バギーの展開も視野に入れています。
初号機であるTM‑Bの懸念点は、車体重量が45kgと重いこと、価格が高いこと、広範に統合された機能がストレスなくシームレスに動作するか懸念が残ること、そして専用部品で構成されているためメンテナンス性が低く修理コストが高くなることが挙げられます。
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