折りたたみパイプ椅子 破断部 |
店頭のデスクワーク用に7-8年ほど常用していた「折りたたみパイプ椅子(会議椅子/ミーティングチェア)」。先日、応力集中の掛かる所が疲労破壊してご臨終に。
稀にユーザーから期待される絶対的な安全や耐久性を確保しようとすると、コストや重量は無限大になってしまいます。どんな工業製品も寿命はありますし、ましてや本製品は安価な大衆向けでしたので、十分に天寿を全うしたと言えます。
工業製品に携わるエンジニアは、程度の差はあれ仕様を満たしながら「VEC (Value Engineering for Customers)」を求められるケースが多いかと。市販品で一番難しいのは、それら制約の中で最期を迎えるとき、如何に安全な壊れ方を設計できるかだと考えます。
よく観ると逆側も既にクラックが入っていました |
結束バンドをつないで補修した背もたれ部 |
このパイプ椅子、購入した際は全く気にしていなかったのですが、背もたれはプラスチック製プレートのみで両パイプを連結するシンプルな構造になってます。通すパイプが無ければ軽くでき、梱包もフラットパックでコンパクトにできるメリットも挙げられます。
ただ、補強材が無いとプラ製の背もたれが荷重で撓み、先に中央が割れることに。これで棄てるのは勿体ないので、店主は、両端に穴を開けて結束バンドでつないで騙しだまし使っていました。こうなると、繰り返し荷重が片方の支柱に集中する結果に。
自転車含め、エンジニアやデザイナーは独自性を訴求したいこともあり、新技術/構造に目を奪われがちです。それら全てを否定すると革新性は損なわれますが、定番やありきたりと思われる、形状/構造/素材にはそれなりの理由があることを再認識させられました。