2025年7月27日日曜日

Honda Fastport eQuad / CIXI VIGOZ / Dynamic Drives Giessen INTELECTRA E-Cargo / MOVARIA / ECCOV 電動アシストマイクロモビリティ | EUROBIKE 2025 出張記

Honda Fastport ブース

2025年6月下旬、ドイツ・フランクフルトで開催された「EUROBIKE 2025」へ出張してまいりました。2018年頃から、店主が予見していたのが、「E-PMV / Electric - Personal Mobility Vehicle」への自動車・二輪メーカーの本格参入。それと「e-Palette」に代表される実店舗の移動型への将来的な移行です。

前者に関して、徐々に各社取組みが形となり見えだしてきており、本ショーにおけるトピックの一つが、EUROBIKE直前にHondaから発表された「Fastport eQuad」です。

Honda Fastport eQuad
Honda Fastport eQuad
Honda Fastport ブース

Hondaブースに展示されていたプロタイプは、「MUBEA U-MOBILITY CARGO」と似た車体構成。現在は、法規や航続距離の制約から他社同様に人力+電動アシスト」のハイブリッドシステムを採用しています。ペダルバイクの弱点を補う理にかなった駆動方式ですが、どうしてもシステムが複雑になりコストが嵩みます。

全固体電池が実用化され、2030~2035年に自動車や家電と共に普及が進めば、航続距離の心配はほぼなくなります。自動運転カーとの共存も現実味を帯びる中、このようなマイクロコミューターはペダルレスのシンプルなE-PMVが主流になるだろう、と店主は予測しています。

CIXI | active vehicle 「VIGOZ」

こちらもEUROBIKE 2025で正式披露された「CIXI | active vehicle VIGOZ」。Lean Mobilityの「Lean3」(旧 TOYOTA i-ROAD)によく似た車体ですが、リカンベントのような姿勢でペダリングする電動アシスト式のPMVで、2026年に初回納車を目指すとのこと。

VIGOZの特徴
  • PERS/Pedaling Energy Recovery System:チェーンレスでペダル操作が電動推進に直結。逆回転で減速や後退も可能。
  • 高速道路対応:L5カテゴリーに分類され、法的に高速道路走行が可能。
  •  航続距離:22kWhバッテリーで最大160km。家庭用220Vコンセントで約6時間でフル充電。
  •  安全性と快適性: 
    • アクティブ傾斜機構によりコーナリング性能向上
    •  衝突安全設計、HVAC(空調)システム、IsoFix対応
    •  二人乗り可能(後部座席あり)
Dynamic Drives Giessen |  INTELECTRA E-Cargo L
Dynamic Drives Giessen |  INTELECTRA E-Cargo L コクピット

INTELECTRA E-Cargo」は、ドイツのスタートアップ「Dynamic Drives Giessen」が開発した都市型モビリティ向けの4輪電動カーゴバイクで、従来の自転車の枠を超えた設計思想が光ります。特徴は下記の通り。 
  • ペダル・バイ・ワイヤ方式(iSHS):チェーンレスで、ペダルの動力を電力に変換し、後輪のモーターを駆動。油汚れやメンテナンスの手間が激減します。
  • 4輪構成で高い安定性:都市部の混雑や荷重時でも安定した走行が可能。サスペンションも調整可能で快適性を確保。
  • モジュラー設計:LとXLの2サイズ展開。XLはユーロクレート8個分の積載が可能。最大積載量は約450kg(乗員含む)。
  • バッテリーと航続距離:1,400Whの交換式バッテリーで、最大約93kmの走行が可能。充電時間は約1.5時間。
  • 法的分類:Pedelec(電動アシスト自転車)扱いのため、免許不要。最高速度は25km/h。
この車両は、自転車と小型トラックの中間的存在として、都市の物流や移動のあり方を再定義する可能性を秘めています。

MOVARIA ブース
MUBEA U-MOBILITY CARGO 車体

MOVARIA」はドイツ・ミュンヘンに拠点を置く企業で、カーゴEバイク向けのパワートレイン技術に特化したモビリティ・テックブランドです。都市のラストマイル物流や持続可能な交通の未来を支える裏方的存在とも言えます。

自社ブランドを持たず、OEM向けの柔軟なモジュール提供を事業の主軸にしており、MUBEA等の他社カーゴバイクメーカーに対してパワートレイン一式を提供しています。

ECCOV ブース
トゥクトゥクに似た3輪マイクロモビリティ

ECCOV INC.」は、韓国・現代自動車グループからスピンオフしたスタートアップ企業。同社は、自社ブランドeカーゴバイク「EMPA」を展開。モジュラー構造の車体プラットフォームが特徴で、用途に応じて車体構造を柔軟に構成を変更できます。また、モジュール交換による迅速な修理・再稼働も可能になっています。

EUROBIKEは、2022年のフランクフルト移転以降、都市型かつ未来志向の方向性へと転換が図られました。これに伴い、電動アシスト型のマイクロモビリティ関連企業の出展が目立つようになっています。この傾向は、程度の差こそあれ台北や上海の各ショーにも共通して見られ、CESやIAA MOBILITYとの棲み分けが、今後一層難しくなっていく可能性があります。


当店の「EUROBIKE 2025」関連記事は、コチラをご覧ください。

※各パーツの詳細&セッティングに関するご質問は、当社ノウハウもございますのでご遠慮ください。

当店の完成車&ホイールの在庫リストは、https://www.avelotokyo.com/p/sale_11.htmlをご覧ください。

お問合せは、info@avelotokyo.com または、070-5075-8192 まで。

2025年7月26日土曜日

Stablead Performance MTB Components | EUROBIKE 2025 出張記

2025年6月下旬、ドイツ・フランクフルトで開催された「EUROBIKE 2025」へ出張してまいりました。そつのない造りと、アースカラーを意識した発色の美しいアルマイト仕上げが目に留まったのが「Stablead」。初めて見聞きするブランドでしたが、それもそのはず本ショーが初のお披露目とのことでした。

ペダル
7075 T6アルミニウム製
ステム
ダイレクトマウントタイプもあり
ステム

「Stablead」は、カリフォルニア発の新興ブランドで、親会社は中国・深センに本社を構える映像機材メーカー「Tilta Inc.」。Tiltaが長年培ってきた精密加工技術を活かし、ジンバルや三脚でのノウハウをMTBコンポーネントへと応用しています。また、Brian Lopes氏をブランドコンサルタントに招聘して、パフォーマンスブランドとして打ち出してます。

リアサスペンションユニット プロトタイプ
カーボンサスペンションフォーク プロトタイプ
カーボンサスペンションフォーク プロトタイプ
T800カーボン製、最大160mmトラベル

まずは、2025年8月頃からステム/チェーンリング/クランク/ペダルをD2Cで上市予定。2026年には、サスペンションフォークとリアショックも追加予定とのこと。

同社ブースでは、Atherton Bikesと同様の手法である、3Dプリントによるチタンラグとカーボンを接着したバイクのプロトタイプも公開されました。ただし、現時点では量産の予定はないとのこと。

DJIの例にも見られるように、異業種で実績を上げたメーカーが、自らの技術力を活かして自転車業界へ参入するケースは今後増えてくる可能性があります。欧州や北米市場であれば、収益面でも十分に事業としての魅力があるのかもしれません。


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2025年7月25日金曜日

YAMAHA G87 / Gardner87 S3R Urban / R Raymon Bikes Ravor / Vantor / Tarok Pure / Tarok / Ravor Ultimate / Korak Ultra E-bike & E-MTB | EUROBIKE 2025 出張記

YAMAHA ブース

2025年6月下旬、ドイツ・フランクフルトで開催された「EUROBIKE 2025」へ出張してまいりました。今回は、「G87/Gardner87」のE-BIKEが話題になったヤマハ、その隣にブースを構えたR Raymonをご紹介します。

G87 / Gardner87 | S3R Urban
都市型 E-BIKE
G87 / Gardner87 | S3R Urban
G87 / Gardner87 | S3R Urban
PW-S3 モーター搭載

ヤマハ製モーターは、Giant、Haibike、Winora、Lapierreなどのブランドに採用されています。2025年3月には、独・Brose社の買収を発表し、徐々にシェア拡大を図っています。一方で同社は、2024年末をもって北米市場でのE-BIKE完成車の卸売を終了することも発表しています。

同社ブースでは、本ショーで発表されたオーストラリアのバイクレーサー、Wayne Gardnerの新E-BIKEブランド「G87/Gardner87」が初披露。ホンダじゃないの?なツッコミはさて置き。

モデル構成は、ヤマハ製PW-X4モータを搭載した「X4 R Trail」と「X4 R Gravity Pro」のE-MTBが2モデル。各モデルは87台のみ生産され、全車にシリアルナンバーと同氏のサインが入るとのこと。これら2台の E-MTB の他に、PW-S3モーターとベルトドライブを搭載した都市向けの「S3R Urban」も展開。アーバンを謳いながらもフロントフォークは、本格的な倒立式を採用してます。

ヤマハ発動機の電動アシスト/E-BIKE モーター遍歴
PW-LINK

YAMAHAは、欧州主要E-BIKEメーカー向けに「PW-LINK」を提案。このプラットフォームは、CAN-Open通信規格に準拠し、EDSを通じてデュアルドライブ/電動パワーステアリング/ABS/GPSトラッキング/スマートロック/スマートライト等の機能統合を可能に。

これによりアライアンスを組んだ企業は、YAMAHAの技術資産を活用しつつ、自社のコンセプトに沿った製品開発が実現できるメリットがあります。各E-BIKEエンジン・バッテリーサプライヤは、プロトコルをオープン/クローズドにするかで戦略が分かれており、トヨタ系ヤマハ発動機と、ボッシュやシマノ他との水面下の戦いも伺えます。

PW-LINK 準拠のコクピットパーツ
PW-X4 / PW-S3 /  PW-L1
PW-LINK対応のバッテリー
RAYMONと共同発表した Ravor / Vantor
RAYMONと共同発表した Ravor / Vantor
RAYMONと共同発表した Ravor / Vantor
PW-X4モーター
PW-X4モーター

YAMAHAとRAYMONは、Eurobike 2025で最新PW-X4モーターを搭載した新型E-MTB「Ravor」「Vantor」を共同発表、同社の連携を強調しました。

R Raymon Bikes ブース

RAYMONはかつて、KTMやHusqvarnaなどと同様にPIERER Mobilityグループに属していましたが、2024年より新会社「R Raymon Bicycles GmbH」として再スタートを切りました。

同ブランドを買収・再構築したのは、創業者コンビのFelix Raymundo Puello氏とSusanne Puello氏で、いずれもドイツ自転車業界で豊富な実績を持つパートナーとして知られています。

同社はYAMAHAとの連携を強めており、既存モーターをベースにRAYMONが独自の出力特性や制御系をチューニング。また、バッテリーやUIコンポーネントもRAYMONの車体設計に組み込まれています。

Raymon Tarok Pure
ZF CentriX, 250/750 W, 105 Nm & SI756, 756Wh, 48V
Raymon Tarok Pure
Raymon Tarok
ZF CentriX, 250/750 W, 105 Nm & SI756, 756Wh, 48V
Raymon Tarok
Raymon Ravor Ultimate
Yamaha PW-X4, 250/800 W, 100 Nm & Yamaha LINK, 840Wh, 100Nm
Raymon Ravor Ultimate
Yamaha PW-X4, 250/800 W, 100 Nm & Yamaha LINK, 840Wh, 100Nm

Raymon Korak Ultra
Bosch Performance Line CX, 250/750 W, 100 Nm &  Power Tube, 800Wh, 100Nm
Raymon Korak Ultra
Bosch Performance Line CX, 250/750 W, 100 Nm &  Power Tube, 800Wh, 100Nm

YAMAHAとの協業を強めるR Raymon Bikesですが、従来からのZFやBosch製のパワーユニットも継続して採用しています。


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2025年7月24日木曜日

Tern | ターン Orox / Quick Haul Long / GSD S10 / Vektron P5i / NBD P8i / GSD S10 | EUROBIKE 2025 出張記

Tern ブース

2025年6月下旬、ドイツ・フランクフルトで開催された「EUROBIKE 2025」へ出張してまいりました。当店でも取り扱っている「Tern/ターン」。台北ショーには出展しなくなって久しい同社ですが、EUROBIKEでは新商品「Orox」を中心にブース展開しておりました。

2020~2022年にかけて、同社E-BIKEは欧州市場で爆発的に売り上げを伸ばしました。COVID-19パンデミックによる都市交通の変化と、持続可能なモビリティへの関心の高まりが重なったタイミングでした。

この時期、公共交通機関の利用を避ける動きが広がり、個人移動手段としてE-BIKEの需要が急増。特に都市部では、通勤/買い物/配送用途での利用が拡大しました。また、ドイツ/フランス/オランダなどでは、E-BIKE購入に対する補助金制度が導入され、Ternのような高品質ブランドの車体が選ばれやすくなった背景も挙げられます。

特にTernは「GSD」や「HSD」などのE-Cargo Bikeを擁しており、これが欧州のラストマイル配送市場やファミリー層に強く支持されました。特にドイツやオランダでは、カーゴバイクのインフラ整備が進んでいたことも追い風に。これらは、同社戦略がドンピシャでハマった結果とも言えます。

フォールディングバイクをルーツに持つTernですが、近年の市場動向を踏まえ、製品開発の主軸をE-BIKEへとシフトしています。上海ショーでの展示にも見られるように、欧州市場ではE-BIKE、アジア市場では折り畳み自転車と、地域特性に応じてビジネスを進めています。

Tern Orox
Tern Orox
Tern Orox

Ternの新型E-BIKE「OROX」は、同社の都市型カーゴバイク路線をさらに拡張した「冒険対応型カーゴE-BIKE」として、2024年に登場しました。都市交通だけでなく、オフロードや長距離ツーリングにも対応する設計が特徴です。

DEATH STRANDINGにも登場しそうな、この車体の製品コンセプトは、「Go Anywhere, Go Anytime, Bring Anything」で、下記特徴が挙げられます。
  • 多用途対応:都市部の通勤から山岳地帯のトレイルまで、幅広い地形に対応。
  • 積載力:最大積載重量は462lb(約210kg)で、カーゴバイクでトップクラス。
  • 冒険志向:雪/砂/泥/岩場など、過酷な環境でも走行可能な設計。
「都市型カーゴバイクのSUV」とも称されるほどの堅牢性と汎用性を誇るこのモデルは、Ternが従来展開していたGSDやHSDとは異なり、都市を越えて「冒険」に踏み出すためのE-BIKEとして位置づけられています。

Tern Quick Haul Long
Tern GSD S10
Tern Vektron P5i
Tern Vektron P5i
Tern Vektron P5i
Tern NBD P8i
Tern NBD P8i
Tern GSD S10
Tern GSD S10
屋外 DEMO AREAでのTernブース
TEST TRACKで試乗可能
Tern Quick Haul Long: Simply Capable Family Cargo eBike
Tern Quick Haul Long: Simply Capable Family Cargo eBike
Tern Orox


Ternは、屋外のDEMO AREAでもブースを構えており、TEST TRACKで試乗可能でした。EU圏では都市部の自動車進入を抑制する政策が多様に展開されており、環境改善/交通安全/都市空間の再構築を目的とした取り組みが進んでいます。

また、EC市場の拡大に伴い、ラストマイル配送の課題が浮き彫りになっています。日本のように軽バンが普及していないEUでは、MUBEA社製「U-MOBILITY CARGO」などの新型車両が、配送事業者によって積極的に導入されています。

本ショーの開催地であるドイツは現在、欧州最大のE-BIKE市場を形成しており、TernのGSDモデルは配送業者や子育て世代の間で高い人気を誇っています。一方、オランダでは自転車文化が深く根付いており、カーゴバイクに対する需要が非常に高いのが特徴です。

こうした動きは、単なる一過性のブームではなく、都市型モビリティの構造的な転換の一端として定着しつつあります。Ternはまさにこの潮流に乗った代表的なブランドのひとつと言えるでしょう。


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