2020年10月30日金曜日

徒然なるままに ロード用 ディスクブレーキの今後の動向を考える その5 クロモリ/スチール フレーム剛性バランス

クロモリ/スチール・スルーアクスル・ロードバイク
東京サンエス OnebyESU JFF#701D 試作品

過去にポストしたその1その2その3に続いて、スチール/クロモリ製のスルーアクスル・ディスクブレーキロードのフレーム剛性や前後バランスについて考えてみようかと。

MY2018頃から登場した、エアロ/ディスクブレーキ/スルーアクスルの3要素を搭載したカーボン製エアロ・ロードバイクに乗られた方から「速い」や「進む」の感想をよく耳にしました。ついエアロ効果が注目されますが、一番効いているのは、「スルーアクスル」化によるホイール捻じれの抑制と店主は考えています。

ディスクブレーキマウントやスルーアクスル導入で、当初はフレーム前後のバランスがイマイチなモデルも散見されました。しかし、大手マスプロが主戦場とするカーボン/アルミ製フレームは第2~3世代へ経て、リムブレーキ時代の乗り味とは異なるけど、バランスが取れた製品が上市されてます。

一方、スチール(=クロモリ)製のディスク・ロードバイクですが、30c以上のタイヤを履かせるようなグラベルやツーリングバイクは、落としどころが確立されてきた感がありますが、25cタイヤ装着を想定するターマック専用モデルは、小さなマーケットで参入メーカーが少ないこともあり、殆どがまだ最適解を見いだせていないと店主は考えます。

その理由は、細身な高圧タイヤは変形量が小さい故、スチールに期待される「しなやかさ」の配分がフレーム側にも求められるのに、アルミに比べてチューブ肉厚や形状等の自由度が低く、スルーアクスルで剛体になったフレームは荷重のタメやニガシが作りにくいことが挙げられます。それにより、リムブレーキ時代の乗り味の再現を困難にしてます。

そんな背景もあって、ここ数年スチールロードバイクでご相談を受けた際、ターマック用で従来の「ヒラヒラ」した乗り味が欲しいなら、当店ではリムブレーキモデルをお勧めしてきました。

この辺りの模索は、東京サンエスさんの「月刊サンエスウォッチング Vol.21 & 27」に核心を突いたことがサラっと書いてあります。そんな中、マスプロで一歩先んじているのが、老舗「Ritchey/リッチー」。ディスクロード「ROAD ROGIC DISC」のヘッド周りはインテグラル仕様ながら、上下ワンともOS(1-1/8)に抑えられて、重量と剛性バランスを取っているのが窺えます。リアドロップアウトもオリジナルで良く練られています。

そんなこんなで、現時点で店主が考えるターマック向けスチール・ディスクブレーキロードの落としどころは…。

1.ヘッドチューブ&フロントフォーク
「テーパードヘッドチューブ+OSストレートステアリングコラム」→BSC ANCHORのRLシリーズやCannondale Topstone Carbonと同様に下ワンのベアリングは大径化して強度を稼ぎながらも、コラムはストレートのままで過剛性を抑える狙い。ただ、テーパードヘッドの溶接性を考えるとダウンチューブの大径化がベターで、全体的に重量&剛性が増してしまうのが難点。また、肝心のフロントフォーク入手性が非常に低いのが障害です。

「OSノーマルヘッドチューブ+OSストレートステアリングコラム」→先述のサンエスさんの「OnebyESU JFF#701D」や「Ritchey ROAD ROGIC DISC」と同じアプローチ。下ワンBRG.の耐久性&Fブレーキの剛性ダウン、高速コーナーのライントレースが甘くなるのはネガティブ要素ですが、より現実的な落としどころです。

2.リア三角
現代のエアロ系カーボン・ロードバイクで多く採用される「ドロップシートステー」。スチールでもすでに取り入れられた歴史があって、有名どころは「BDI-CHO」かと。当時は、エアロ効果よりも正三角形に近づけて最小材料で高剛性を稼ぐのが狙いだったと記憶します。

ただ、スチールの場合は、薄肉なバデッド部やシートラグが無いことで圧縮応力に耐えられず、シートステーのシートチューブ接合部にクラックが入ることもあり、積極的に採用されることは減りました。シートポストが、補強材の一部を担っているという考えもあります。

CannondaleのSynapse/SUPERSIX EVO/CAAD13/Topstone Carbonは、シートチューブを積極的にしならせて快適性やトラクションを高めていますが、スチールでは難しいアプローチ。リア三角をしならせるだけなら、ステーを伸ばせば良いのですが、キビキビ感は損なわれてしまいます。

それを踏まえると大きめなリア三角で、ブリッジを無くしてバランスを取るのが妥当かと考えています。メーカー目線だと「引張荷重の分散/フェールセーフ/芯だし作業性」の観点から、ブリッジを残したい意見もありますが。

3.ANCHOR Neo-Cot で作れば良いんじゃない?説
BSCさんには以前から要望しているのですが、「ディスコンになったNeo-Cot MTBフレーム」「RL用カーボンフォークコラム」あたりの手札を組合せれば、大きな投資をせずに面白いバイクが作れるじゃないかと期待しています。勿論、マーケットサイズや採算のハードルは付きまといますが。

ロード用 ディスクブレーキの今後の動向を考える 関連ポスト
その1
その2
その3
その4

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